警備業法 ~警備業を営む企業や警備員が守るべきルール~
警備業法は、警備業を営む企業や警備員が守るべきルールを定めた法律で、公共の安全と秩序を維持するために非常に重要な役割を果たしています。
単なる規制ではなく、信頼される警備業務の基盤です。
・正式名称:昭和47年法律第117号「警備業法」
・目的
民間警備業の適正な運営を確保
公共の安全と秩序の維持
犯罪や事故の未然防止
📋 警備業務の4つの区分(業務種別)
区分 | 内容 | 主な業務例 |
1号警備 | 施設警備 | オフィスビル、商業施設、病院などの巡回・監視 |
2号警備 | 交通誘導・雑踏警備 | 工事現場やイベント会場での誘導・整理 |
3号警備 | 貴重品運搬警備 | 現金・貴金属などの安全な輸送 |
4号警備 | 身辺警護 | 要人や著名人の護衛(ボディガード) |
📝 警備業を営むための要件
・公安委員会の認定:都道府県公安委員会からの認可が必要
・欠格事由の確認:暴力団関係者や一定の犯罪歴がある者は認定不可
・警備員指導教育責任者の配置:国家資格保有者を営業所ごとに配置
・教育制度
新任教育:最低20時間以上の講義・実技
現任教育:年1回以上の継続教育
⚠️ 違反事例と罰則
違反内容 | 想定される罰則 |
無認可営業 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
教育未実施 | 営業停止命令、指導処分 |
虚偽記載(教育簿など) | 指導教育責任者の資格剥奪、罰金 |
違法派遣 | 派遣元・依頼元ともに営業停止処分 |
🧠 実務への応用ポイント
・教育記録や契約書類の正確な管理が不可欠
・勤怠・配置管理システムの導入で法令遵守を効率化
・36協定や労働時間管理との連携も重要(特に24時間勤務体制の場合)
警備業法に基づく、法的上の義務と違反
警備業法に基づき、警備員の適切な教育および適正な配置は、法的上の義務であり、これを怠った場合には違反と認定され、行政処分の対象となります。具体的な違反事例としては、「新任教育未実施」「教育記録簿への虚偽記載」等が挙げられ、これらは業務制限や営業停止などの厳しい措置に至る可能性があります。違反の主な原因としては、教育体制の不備や人員管理上の問題が考えられ、結果として警備業者に対する社会的信頼の低下を招くこととなります。
なお、警備業法第15条等の規定に違反した場合には、警察庁による指導命令や30万円以下の罰金が科されることがあります。警備員が法令を遵守し、公共の安全に資する存在となるためには、継続的かつ体系的な教育の実施および管理体制の強化が不可欠です。
警備業法違反の代表的事例と処分内容
警備業法に違反した場合、公安委員会による行政処分が科されることがあり、企業の信頼性や業務継続に重大な影響を及ぼします。以下に、過去に公表された代表的な違反事例を挙げます。
1.教育懈怠による営業停止処分(株式会社メッサアドシステム)
・違反内容:新たに警備業務に従事させようとした11名に対し、法定教育時間を満たす教育を実施せずに業務に従事させた。
・処分内容:営業停止命令(30日間)
2.虚偽記載による指示処分(株式会社MSK)
・違反内容:警備員名簿に虚偽の採用年月日および従事年月日を記載。
・処分内容:指示(警備業法第48条)
3.欠格者の従事による営業停止命令(セキュリティーセキュリティー株式会社)
・違反内容:欠格事由に該当する者を交通誘導警備業務に従事させた。
・処分内容:営業停止命令(90日間)
4.教育実施簿の虚偽記載(複数事業者にて確認)
・違反内容:教育未実施にもかかわらず、教育済みとして記録簿に記載。
・処分内容:30万円以下の罰金、認定証返納命令など3
違反の主な原因
・人員不足による違法派遣:再委託手続きを踏まずに他社から警備員を応援として派遣。
・教育体制の不備:教育時間の未達成や教育記録の管理不備。
・業務負荷の過多:教育や管理業務が後回しとなり、法令遵守が疎かになる傾向。
信頼回復のための対策
・教育実施簿の厳格な管理と定期的な監査
・指導教育責任者による教育体制の強化
・再委託時の契約書・認定確認の徹底
📌 警備業法違反につながる主な原因
警備業法違反の背景には、単なる法令無理解だけではなく、業務運営や体制面における根本的な課題が関わっています。
1.教育体制の不備
・新任・現任教育の未実施や記録不備:教育記録簿への虚偽記載、教育時間の未達成など。
・指導教育責任者の管理不足:教育実施計画が曖昧、実施内容の記録管理が甘いケースが目立ちます。
2.人員管理の不十分さ
・欠格者の就業:前科歴のある者や法的に就業できない者の配置。
・過剰労働や未申告の時間外勤務:36協定未締結、もしくは遵守していない状態。
3.業務委託・応援派遣に関する誤運用
・違法な再委託:許認可のない企業や契約外の応援派遣により違法性が発生。
・委託契約の内容不備:契約内容や従事者の認定確認が曖昧なまま業務を開始。
4.経営管理上の問題
・リソース不足による管理懈怠:人的・時間的余裕がなく、教育や労務管理が後回しにされる。
・収益優先による法令軽視:教育や認定確認を省略し利益を優先する傾向。
5.法令知識の欠如
・現場責任者や経営層の理解不足:警備業法第15条や第21条など、業務制限・責務の認識が不十分。
・改正への対応遅延:法令改正(例:2024年4月改正)への研修・体制変更が未実施。
こうした背景を踏まえて、違反を未然に防ぐには、
・教育体制の標準化とデジタル化
・警備員情報・資格管理のシステム化
・定期的な法令研修と自己点検の実施 などが有効です。
🚨 警備員による違反事例とその背景
警備員個人による違反事例は、警備業法だけでなく、現場での行動や倫理面にも関わる重要なポイントです。
違反事例 | 内容 | 処分・影響 |
教育未実施での現場配置 | 新任・現任教育を受けていないまま業務に従事 | 営業停止(7〜30日)、指導教育責任者証の返納命令 |
虚偽記載(教育実施簿) | 実際には教育していないのに「済」と記録 | 罰金(30万円以下)、認定証返納命令(5年間営業不可) |
違法派遣の受け入れ | 他社からの応援を手続きなしで受け入れ | 派遣元・受け入れ側ともに営業停止処分 |
欠格事由該当者の従事 | 禁固刑歴や暴力団関係者などを警備員として雇用 | 認定取消、罰金、営業停止 |
権限逸脱行為 | 職務質問、交通整理、取り調べなど警察権限の模倣 | 指導処分、営業停止、信頼失墜 |
情報漏洩 | 業務上知り得た個人情報や施設情報を外部に漏洩 | 懲戒処分、損害賠償、営業停止 |
🔍 違反が起こる主な原因
・教育管理の不徹底:教育記録の管理が曖昧で、虚偽記載が発生
・人手不足による応援依頼の乱用:違法派遣に繋がる
・制度理解不足:警備員が自分の権限を誤認して行動
・採用時のチェック不足:欠格事由の確認が甘い
✅ 予防策のヒント
・教育進捗をデジタル管理し、未完了者は現場に出さない
・応援体制は三社間契約で合法的に構築
・採用時に欠格事由チェックリストを活用
・権限逸脱防止のために定期的な倫理研修を実施
こうした違反は、警備員個人の問題だけでなく、会社の管理体制にも直結します。
企業が警備員の違反にどう対処すればよいのか?
企業が警備員の違反に対処するには、単なる事後対応ではなく、予防・是正・再発防止の3段階で体系的に取り組むことが重要です。
こうした対応は、企業の信頼性を守るだけでなく、公安委員会からの評価にも直結します。
🛠️ 違反発生時の初動対応
対応項目 | 内容 |
事実確認 | 教育簿・勤怠・配置記録などを精査し、違反の有無と範囲を特定 |
関係者ヒアリング | 警備員・現場責任者・指導教育責任者から事情聴取 |
公安委員会への報告 | 指示処分前でも、任意報告で誠意を示すことが信頼回復に有効 |
業務停止の準備 | 営業停止命令に備え、代替体制や顧客対応マニュアルを整備 |
🔧 是正措置の実施
・教育未実施者への速やかな補講
・虚偽記載の訂正と再提出
・欠格事由該当者の業務停止・退職勧告
・違法派遣の契約見直しと三社間契約への切替
🔁 再発防止策の構築
対策 | 実務例 |
教育管理の強化 | 教育簿のクラウド化+講師署名+映像記録 |
欠格事由チェックの定期化 | 採用時+年1回の確認ルールを社内化 |
契約・応援体制の整備 | 再委託契約書+公安委員会への届出を必須化 |
法令研修の定期実施 | 半年ごとの警備業法・労基法研修で意識向上 |
違反を防ぐための具体的な対策とは?
警備業法違反を未然に防止するためには、単なる注意喚起では不十分であり、実務レベルで機能する運用体制と管理手法の確立が求められます。
✅ 違反防止のための具体的対策一覧
1.教育体制の構築と記録管理強化
・標準化された教育マニュアルの作成(新任・現任教育)
・警備員指導教育責任者による教育実施の確認と署名
・教育実施簿のデジタル化(改ざん・虚偽記載防止)
・教育の記録簿と映像記録の保存(万が一の監査対策)
2.人員・資格管理の徹底
・欠格事由チェックリストの運用
・前科、成年被後見人等の該当有無を確認
・資格保有状況の台帳管理
・検定資格者の配置義務(特に1号・2号業務)
・入社時・定期更新時の本人確認および証明書提出
3.業務委託・応援派遣の適正化
・業務再委託のルール明文化
・再委託時は公安委員会への届出と契約書作成
・応援要員の配置には必ず個別認定書の確認
・委託先業者との覚書・誓約書の取り交わし
4.労務・勤務体制の適正化
・36協定の締結と届出管理
・シフト表・勤務実績表の二重管理
・長時間労働や連続勤務の抑制
・ストレスチェック制度導入による福利厚生強化
5.法令研修・自己点検制度の導入
・年2回以上の法令研修(改正時は都度実施)
・自己点検チェックリストの社内共有と月次報告
・行政指導事例の共有と内部研修への反映
📘 運用上の補足
対策項目 | 推奨頻度 | 担当者 |
教育簿の更新 | 教育実施後即日 | 指導教育責任者 |
欠格事由確認 | 入社時+年1回 | 総務担当 |
業務契約書管理 | 更新・締結時 | 営業/法務部 |
勤務時間チェック | 月次 | 労務管理者 |
法令研修 | 半期ごと | 管理職主導 |
こうした対策は、警備業法だけでなく、企業としての信頼や競争力の強化にも直結します。
警備業法を遵守するための具体的な手続き
警備業法を遵守するためには、実務に落とし込むための具体的な手続きと管理体制が不可欠です。
法令遵守と実務効率の両立を目指すには、テンプレートや運用フローの整備が非常に効果的です。
🏢 1.警備業認定申請の手続き
手順 | 内容 | 補足 |
定款の確認 | 「警備業」の記載があるか確認 | ない場合は定款変更が必要 |
必要書類の収集 | 履歴事項証明書、誓約書、診断書など | 都道府県警察HPから様式DL可能 |
認定申請 | 管轄警察署(防犯係)へ提出 | 手数料:23,000円、審査期間:約40日 |
認定証の受領 | 認定証の交付を受ける | 有効期間:5年間(更新申請は満了30日前まで) |
服装届出書の提出 | 制服の色・型式を公安委員会へ届出 | 警備開始前日までに提出必須 |
👨🏫 2.教育体制の整備と記録管理
教育区分 | 内容 | 実施要件 |
新任教育 | 基本教育+業務別教育 | 合計20時間以上(初任時) |
現任教育 | 継続的な知識・技能更新 | 年1回以上、10時間以上が目安 |
教育簿の管理 | 実施記録・講師・内容を記録 | 虚偽記載は罰則対象(資格剥奪等) |
📌 教育実施簿のテンプレート化や、クラウド管理システムの導入で効率化が可能です。
📋 3.勤怠・配置・契約管理の整備
・勤怠管理:36協定との連携、24時間勤務体制の労基法対応
・配置管理:資格保有者の配置、現場ごとの業務区分の明確化
・契約書類:業務委託契約、秘密保持契約、個人情報保護対応
💡「25分ルール」などの警備業法施行細則も考慮し、配置計画とオペレーションマニュアルを整備しましょう。
⚠️ 4.違反防止のためのチェック体制
チェック項目 | 内容 |
欠格事由の確認 | 役員・警備員の身元調査、暴力団排除 |
教育記録の監査 | 年次点検、外部監査の導入も有効 |
届出・変更管理 | 役員変更、営業所移転などの届出漏れ防止 |
装備品管理 | 護身用具・制服の届出と使用制限の遵守 |
🧠 実務に活かすポイント
✅ テンプレート化:教育簿、誓約書、契約書などを標準化
✅ システム導入:勤怠・教育・配置を一元管理
✅ マニュアル整備:異常時対応、25分ルール、イレギュラー対応
効率的な運用方法についてアドバイス
効率化は「コスト削減」ではなく、「法令遵守の安定化と人材定着率の向上」につながります。
⚙️ 1.教育・勤怠・配置の「三位一体管理」
✅ 教育管理
・新任・現任教育の履歴を デジタル台帳化
・教育簿は クラウドで共有・更新できる仕組みに
・講師別・業務別でテンプレート化すると記録ミス防止に効果的
✅ 勤怠管理
・シフト表と36協定を 連動させた勤怠管理ソフトの導入
・24時間勤務の交代タイミングに「25分ルール」等の自動警告機能を設定
✅ 配置管理
・警備員指導教育責任者の 資格保有状況をシステム上で一覧化
・現場ごとの業務区分(1号〜4号)を「タグ管理」で見える化
📁 2.書類と帳票の標準化
書類 | 効率化方法 |
教育実施簿 | Excelベースのテンプレート+自動入力式 |
誓約書・欠格事由確認書 | 電子署名対応フォーマットで配布・回収 |
契約書類(委託・秘密保持など) | ひな形化+チェックリストを併用 |
📌 印刷物管理と電子ファイルの二重台帳を排し、1本化された管理台帳に集約することでコンプライアンスリスクを低減できます。
🧠 3.違反リスクの予防フロー構築
・月次点検ルールの制定(教育簿・届出・資格有無)
・年次監査の実施(外部視点からのレビュー)
・アクシデント事例(違法派遣・教育懈怠など)を 社内ケーススタディに変換
📌 作成されている「違反事例記事レポート」も、社内教育資料化することでリスク予防型組織に育てられます。
🛠️ 4.システム・ツール導入の具体例
項目 | おすすめ機能例 |
勤怠管理 | 勤務時間の打刻+異常検知(長時間労働) |
教育管理 | 動画教材+受講履歴とテスト結果の一元管理 |
契約・届出 | 電子署名+変更通知のアラート機能 |
統合管理 | 警備員別の履歴・資格・教育・配置を一括管理 |
警備業法違反防止のための具体的かつ実務的な対策 導入〜運用
🧩 教育体制と運用の強化
新任・現任教育の実施と証跡管理
・教育カリキュラムの標準化(法定時間遵守+業務内容に応じた補足研修)
・警備員指導教育責任者による定期モニタリング
・教育実施簿と録画記録の保存(特に新任時:証跡化による虚偽記載防止)
・警備業務に応じた検定資格の取得支援(1号・2号・3号ごとの必要資格の明確化)
🧾 資格・欠格事由の管理体制構築
採用時・定期確認のしくみ
・欠格事由確認シートの配布と署名管理(成年被後見人/禁固刑歴等の確認)
・認定証や検定資格証のスキャン保存+台帳登録
・年1回の資格情報点検日を社内ルール化
🔁 委託契約・再委託への対応
外部応援者・業務再委託管理
・再委託ルールを明文化し、契約書に盛り込む
・認定証・契約書の管理台帳と届出履歴の整理
・応援要員の事前認定確認と書面保存
🕒 勤怠・労務管理の適正化
労働時間とシフト管理の見直し
・36協定の締結・管理(警備業種別に対応)
・勤務表・実績表・シフト希望の三位一体管理
・連続勤務の制限ルール(例:24時間業務後は24時間以上休養)
・ストレスチェック制度の導入と記録保存
🧠 法令遵守・社内研修体制の確立
研修・自己点検・外部監査
・半年ごとの法令改正研修(警備業法・労基法)
・管理職による月次自己点検チェック
・公安委員会指導事例の社内共有会の開催
📊 テンプレート・ツール活用のすすめ
管理項目 | 推奨ツール例 | 備考 |
教育記録管理 | Excel/クラウド台帳 | シート保管・データ連携 |
欠格事由確認 | Googleフォーム+台帳連動 | 回収履歴付き |
勤務時間チェック | 勤怠管理ソフト | 打刻+実績比較可能 |
委託契約台帳 | Word/PDF管理+契約管理ツール | 更新通知付き |
法令研修記録 | PowerPoint+録画保存 | 受講履歴管理可能 |
これらの対策は、単なる法令対策にとどまらず、信頼性・業界競争力の向上にも寄与します。