勤務実績の管理手段｜Excel vs 勤怠管理システム～　ローカル型 vs クラウド型

勤務実績とは、従業員が割り当てられた職務や責任をどのように遂行したかを記録・評価するもので、労務管理や給与計算、業務改善において非常に重要な役割を果たします。

勤務実績とは？

勤務実績表（勤怠管理表）は、従業員の出退勤時間、労働時間、残業、有給休暇、欠勤などを記録する書類です。給与計算や労働時間の把握、法令遵守のために必須です。

・定義：職員が割り当てられた職務と責任を遂行した実績のこと。
・目的：
　労働時間や出勤状況の把握
　給与計算の根拠資料
　法令遵守（労働基準法第37条など）
　人事評価や業務改善の材料

勤務実績表の主な記載項目

項目	内容例
勤務時間	実働時間、始業・終業時刻
残業時間	所定外労働時間
休日出勤	法定休日・所定休日の勤務
雇用形態	正社員、契約社員、パートなど
遅刻・早退	時間と理由
有給取得日数	取得日と残日数
欠勤日数	病欠、私用などの理由付き

作成方法と管理手段

・Excelや紙ベース：小規模事業者向け、柔軟だが手間がかかる
・勤怠管理システム：
　出退勤打刻（ICカード、スマホ、顔認証など）
　自動集計・給与連携
　クラウド保存で検索・保管が容易
　法令対応（労働時間の適正管理）

作成方法
１．Excelやスプレッドシートで作成
・メリット:
　・導入コストがかからない
　・カスタマイズが容易
　・テンプレートが豊富に存在

・記載項目例:
　・出勤・退勤時間
　・労働時間（休憩時間を除く）
　・残業時間
　・有給取得日数
　・欠勤・遅刻・早退

２．勤怠管理システムを利用
・メリット:
　・打刻データの自動集計
　・法定労働時間や36協定に基づくアラート機能
　・給与計算ソフトとの連携
　・モバイル打刻やGPS機能付きもあり

管理手段と法的義務
保管義務
・労働基準法第109条により、勤怠情報は「5年間」保存が必要。
・賃金台帳の一部として、正確な記録が求められます（第108条）。

管理のポイント
・正確性：打刻ミスや改ざん防止が重要
・セキュリティ：個人情報保護の観点からアクセス制限や暗号化が必要
・バックアップ：クラウド保存や定期的なバックアップでリスク回避

比較表：Excel vs 勤怠管理システム

項目	Excel	勤怠管理システム
導入コスト	低	中〜高
カスタマイズ性	高	中
自動集計	なし	あり
法令対応	手動	自動アラートあり
セキュリティ	低（設定次第）	高（クラウド・認証機能）
拡張性	限定的	高（給与・労務連携）

業務効率と法令遵守を両立したい方には、Excelでの設計から始めて、将来的に勤怠管理システムへの移行を検討するのが理想的です。

勤務実績の正確な管理方法

１．勤怠管理システムの導入
・クラウド型システムを活用することで、出退勤の打刻・残業・休暇などをリアルタイムで記録可能。
・スマホ、ICカード、顔認証など多様な打刻手段に対応。
・自動集計・給与連携・法令対応機能が充実2。

２．データの「見える化」と分析
・勤務実績データを蓄積し、残業傾向・有給取得率・打刻ミスなどを可視化。
・業務のムダや人員配置の偏りを発見し、改善アクションにつなげる。

３．記録の客観性と法令遵守
・2019年の労働安全衛生法改正により、客観的な労働時間記録が義務化。
・タイムカードやシステム打刻による記録が推奨され、自己申告のみでは不十分。

４．勤務実績表の整備と保管
・勤務時間、残業、休日出勤、遅刻・早退、有給・欠勤などを網羅。
・労働基準法により、原則3年間の保管義務あり。

管理精度を高めるポイント

ポイント	内容
自動化	手入力を減らし、記録ミスを防止
リアルタイム性	即時反映で状況把握が容易
アラート機能	残業超過や未打刻を通知
柔軟な集計	部署別・個人別・月別など多角的に分析
セキュリティ	データ改ざん防止とアクセス制限

※実務的ヒント
・警備業などシフト制が多い業種では、勤務実績の正確な把握が特に重要です。
・勤務実績表管理システムを導入することで、業務効率化と法令遵守を両立できます。
・紙ベースからの脱却は、デジタル化・ペーパーレス化の第一歩としても有効です。

保管義務と期間

勤務実績（勤怠記録）の保管義務と期間については、労働基準法や関連法令に基づいて厳密に定められています。
コンプライアンスと業務効率を両立したい方には、勤怠管理システムでの自動保存＋バックアップ体制の構築が理想的です。

勤務実績の保管義務
法的根拠
・労働基準法第109条：使用者は、労働者に関する帳簿（賃金台帳、出勤簿など）を保存する義務があります。
・労働基準法施行規則第54条：賃金台帳、出勤簿、労働者名簿などは「5年間」保存しなければなりません。

保管期間の詳細

書類の種類	保管期間	備考
出勤簿（勤務実績）	5年間	労働時間・休日・休暇の記録を含む
賃金台帳	5年間	給与計算の根拠となる
労働者名簿	5年間	雇用管理の基本情報
労働条件通知書	3年間	雇用契約の内容確認に使用
36協定（時間外労働協定）	3年間	労働基準監督署への届出が必要

※管理上の注意点
・電子保存も可能：紙媒体でなくても、クラウドや勤怠管理システムでの保存が認められています（ただし、改ざん防止措置が必要）。
・個人情報保護：保存期間中は、個人情報保護法に基づき適切な管理が求められます。
・監査対応：労働基準監督署の調査や税務調査に備え、すぐに提出できる体制が望ましい。

応用：勤務実績の活用例

勤務実績は単なる記録ではなく、企業の運営効率やコンプライアンス、従業員の働き方を可視化する重要な情報資源です。業務効率やリスク管理に関心がある方にとって、勤務実績の正確な管理は戦略的な武器になります。

１．人事評価・昇進判断
・勤務時間、残業、休日出勤、有給取得状況などをもとに、勤怠の安定性や責任感を評価。
・勤務実績に基づき、昇進・昇給・表彰の判断材料として活用。

２．給与計算・手当支給
・実働時間や残業時間をもとに、正確な給与・手当の算出が可能。
・深夜勤務・休日勤務などの割増賃金にも対応。

３．シフト管理・業務配置
・勤務実績から繁忙時間帯や人員不足の傾向を分析。
・効率的なシフト設計や人員配置に活用。

４．業務改善・生産性向上
・残業が多い部署や欠勤が多い従業員の傾向を把握し、業務負荷の見直しや業務改善を促進。
・勤務実績と業務成果を照らし合わせて、生産性分析にも活用。

５．コンプライアンス・法令遵守
・労働基準法や36協定に基づく労働時間の上限管理。
・有給休暇の取得義務（年5日以上）への対応。
・客観的な記録により、労務トラブルの予防・証拠保全にも有効。

６．経営分析・コスト管理
・勤務実績から人件費の変動要因を分析し、予算管理やコスト削減施策に活用。
・業務ごとの工数管理と原価計算にも応用可能。

７．従業員支援・健康管理
・長時間労働や連続勤務の傾向を把握し、メンタルヘルスや過重労働の予防*。
・有給取得率や休暇傾向から、働き方の改善提案も可能。

・人事評価：勤務実績をもとに昇進・昇給の判断材料に
・業務改善：残業の多い部署や欠勤傾向の分析
・リスク管理：労働時間超過や不正打刻の検出

※実務的ヒント
・警備業など現場勤務が多く、シフトが複雑な業種では、勤務実績の活用が業務効率とリスク管理に直結します。
・勤務実績をデジタル化・可視化することで、経営層・現場・人事が共通の指標で判断できるようになります。
・勤務実績と業務成果の紐づけにより、評価制度の透明性と納得感が向上します。

勤務実績のデジタル化とは

勤務実績のデジタル化は、紙やExcelベースの管理から脱却し、クラウドやアプリを活用してリアルタイムかつ正確に勤務状況を記録・分析する取り組みです。

・定義：出退勤、残業、有給などの勤務情報をITシステムで記録・管理すること。
・対象業務：勤怠管理、給与計算、労働時間の把握、勤務実績表の作成・保管など。

主な方法

方法	特徴
勤怠管理アプリ	スマホ・タブレットで打刻、リアルタイム集計
クラウド型勤怠管理システム	出退勤・残業・休暇を一元管理。給与連携も可能
ICカード・顔認証	客観的な打刻記録で不正防止
API連携	ERPや給与ソフトと連携し、業務効率化

デジタル化のメリット
・正確な記録：打刻ミスや記録漏れを防止
・業務効率化：集計・分析・給与計算が自動化
・法令遵守：労働時間の客観的把握によりコンプライアンス強化4
・柔軟な働き方対応：テレワークやフレックスにも対応可能
・ペーパーレス化：保管・検索が容易になり、コスト削減

注意点と導入のポイント

注意点	解説
初期コスト	システム導入費や教育コストが発生
システム選定	自社の業態・規模に合ったものを選ぶ
セキュリティ	個人情報保護とアクセス制限が重要
社内教育	従業員への操作説明と定着支援が必要

※実務ヒント
・警備業などシフト制業種では、勤務実績の正確な把握が特に重要。
・勤務実績表管理システムを導入することで、業務効率化と法令遵守を両立できます。
・紙ベースからの脱却は、デジタル化・ペーパーレス化の第一歩としても有効です。

ローカル型 vs クラウド型勤怠管理システム比較

勤怠管理システムを選ぶ際、ローカル型（オンプレミス）とクラウド型にはそれぞれメリット・デメリットがあります。

比較項目	ローカル型（オンプレミス）	クラウド型
導入コスト	高め（サーバー・ライセンス費用）	初期費用が低い、月額課金が主流
運用・保守	自社で管理（IT部門が必要）	ベンダーが保守・アップデート
カスタマイズ性	高い（業務に合わせて柔軟に構築可能）	限定的（プラン内での設定）
セキュリティ	社内完結で高いが、管理責任は自社	通信暗号化・多層防御あり、ベンダー依存
アクセス性	社内ネットワーク限定	インターネット環境があればどこでも可
法改正対応	自社で対応が必要	自動アップデートで迅速対応
テレワーク対応	難しい（VPNなどが必要）	容易（スマホ・PCで打刻可能）

☆実務的ヒント
・警備業などシフト制・現場勤務が多い業種では、クラウド型の方が柔軟性とリアルタイム性に優れています。
・法改正や働き方改革への対応を重視するなら、クラウド型が有利です。
・セキュリティポリシーが厳しい企業や、独自の業務フローがある場合はローカル型も検討価値あり。
・クラウド型でも「IP制限」「多要素認証」「ログ管理」などでセキュリティ強化可能。
・ローカル型は初期投資が大きいため、中長期的な運用コストと人材リソースも考慮しましょう。

クラウド型勤怠管理システムの主なデメリット

クラウド型勤怠管理システムには多くのメリットがありますが、導入・運用にあたって注意すべきデメリットも存在します。以下に代表的なデメリットを整理しました。

１．ネットワーク依存
・インターネット接続が必須。通信障害や回線トラブル時には打刻やデータ確認ができないことも。

２．セキュリティリスク
・クラウド上に従業員の個人情報や勤務データを保存するため、情報漏洩や不正アクセスのリスクがある。
・ベンダーのセキュリティ対策に依存するため、選定時に対策状況の確認が重要2。

３．月額課金・ランニングコスト
・初期費用は抑えられるが、月額利用料が継続的に発生する。
・利用人数や機能追加に応じてコストが増加するケースも2。

４．カスタマイズの制限
・パッケージ型のため、自社独自の勤務体系や運用ルールに完全対応できないことがある。
・柔軟な設定が可能な製品もあるが、限界がある。

５．サービス停止・障害リスク
・ベンダー側のメンテナンスや障害時に、システムが一時的に利用できなくなる可能性がある。

６．社内浸透に時間がかかる
・操作方法の習得や運用ルールの変更に伴い、従業員への教育や定着支援が必要。

★実務的ヒント
・セキュリティ対策が明示されたベンダーを選定し、IP制限・多要素認証・ログ管理などの機能を確認しましょう。
・警備業など複雑なシフト管理が必要な業種では、柔軟な設定が可能なクラウド型を選ぶと安心です。
・月額課金のコスト管理には、利用人数や機能の見直しが有効です。

ローカル型勤怠管理システムの主なデメリット

ローカル型（オンプレミス型）勤怠管理システムは、自社サーバーで運用するため高い自由度とセキュリティを誇りますが、導入・運用にはいくつかのデメリットがあります。

デメリット内容
初期導入コストが高いサーバー機器、ライセンス、インフラ整備などに多額の費用がかかる
保守・運用の負担が大きいシステム管理者が必要で、障害対応やアップデートも自社で実施
法改正への対応が遅れやすい労働法改正などに合わせた機能更新が手動対応になる
柔軟性に欠ける場合がある他システムとの連携や外部アクセスに制限がある
テレワーク対応が困難社内ネットワークに依存するため、外部からの打刻や確認が難しい
スケーラビリティに限界従業員数や拠点が増えると、サーバー増強や再構築が必要

★実務的ヒント
・警備業など複数拠点・シフト制が多い業種では、クラウド型の方が柔軟で運用しやすい傾向があります。
・ローカル型を選ぶ場合は、長期的なIT人材確保と法改正対応の体制構築が重要です。
・セキュリティポリシーが厳しい企業や、独自の業務フローがある場合はローカル型が有利になることもあります。

業務効率化のポイント

勤務実績表管理システムの導入は、業務効率化と法令遵守の両立を可能にする戦略的な施策です。特に警備業のようにシフト制・多拠点・多様な勤務形態が存在する業種では、導入効果が非常に高くなります。

１．勤務時間の自動集計
・出退勤データをリアルタイムで収集し、残業・休暇・欠勤などを自動で計算。
・手作業による集計ミスや時間ロスを削減。

２．給与計算との連携
・勤務実績表のデータを給与計算ソフトと連携することで、支給額の自動計算が可能。
・経理・人事部門の負担を軽減。

３．データの可視化と分析
・部署別・個人別の勤務傾向をグラフやレポートで可視化。
・業務改善や人員配置の最適化に活用。

法令遵守のポイント
１．労働時間の客観的把握
・タイムカード、ICカード、スマホ打刻などで正確な記録を残す。
・自己申告ではなく、客観的な記録が労働安全衛生法の改正に対応。

２．36協定の上限管理
・残業時間の自動集計とアラート機能により、法定上限を超えないよう管理。
・違反リスクを未然に防止。

３．有給休暇の取得状況の管理
・年5日以上の取得義務に対応し、未取得者への通知も可能。

４．法改正への迅速対応
・クラウド型システムなら、法改正に合わせた機能更新が自動で行われる。

★実務的ヒント
・警備業のような現場勤務が多い業種では、スマホ打刻やシフト管理機能があるクラウド型が特に有効です。
・勤務実績表管理システムの導入により、紙ベースの煩雑な管理から脱却し、業務効率とコンプライアンスを同時に強化できます。
・社労士との連携や36協定の見直しも、システム導入と併せて行うと効果的です。

主な機能一覧

機能	効果
出退勤打刻（IC/スマホ）	正確な記録と不正防止
勤務時間の自動集計	集計ミスの防止と時短
残業アラート	36協定違反の予防
有給管理	法定取得義務への対応
給与連携	支給額の自動計算
レポート出力	業務改善・人員配置に活用

勤務実績の主な活用例

勤務実績は単なる記録ではなく、企業の運営、評価、改善、法令対応など多方面で活用される重要な情報資源です。